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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

 ピスティが斬りつけるたびに、フォビスは自分の剣でそれを受け、または受け流し、時に反撃を加えてきます。
 がきん、がきんという激しい音が、森の中に響き渡ります。
 戦っているのは、もちろんピスティとフォビスだけではありません。兵士たちも、それぞれの指揮官を守り、敵の指揮官を倒すために、激しく争っています。
 乱戦の中、ピスティは決心しました。
 ――次の一撃で仕留めてやる!
 ピスティは、いったん振りかざした剣を水平に持ち替え、フォビスの動きの裏をかこうとしました。ところが――。
「うッ」
 突然、激しい痛みが、ピスティの腕を襲いました。思わず声が漏れ、同時に、ピスティは剣を落としてしまいました。
 ピスティはすっかり忘れていたのす。レナの、魔法の力が消えてしまったことを・・・・・・。
 魔法の力は、井戸や病院や市場を生み出しただけではなく、すでに死んでいた者を蘇らせ、醜い姿の者を美しく変えていました。
 しかし魔法の力が封じられたことによって、それらはすべて消え失せてしまったのです。井戸も病院も市場も消え、蘇っていた死者は骨に戻り、美しい姿に変わっていた者は、元の醜い姿に戻ってしまったのです。
 それはピスティも同じでした。
 一生治らないと言われていた腕の怪我は、魔法の力によって癒えていましたが、やはり魔法の力が封じられると同時に、怪我も元に戻ってしまっていたのです。
 それを忘れて無理な動きをしたので、ピスティの腕は痛み、そして剣を落としてしまったのでした。
 フォビスは、そんなピスティの隙を見逃しませんでした。ピスティの落とした剣を足で遠くへ蹴飛ばすと、ピスティの喉元へ剣を突きつけたのです。
 ピスティは体を仰け反らせて、すんでのところでそれをかわしましたが、その勢いで地面に尻をついてしまいました。
「勝負あったな」
 フォビスがにやりと笑いました。
「王位と名誉と財産と、あらゆるものを私から奪った罪、地獄で悔やむがいいッ――」

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