
ここから始まる物語
第22章 最後の戦い
ピスティの喉元に、剣が触れます。そのひやりとした感触に、ピスティは覚悟を決めました。ところが――。
「――と言いたいところだが」
何を思ったのか、フォビスは剣を引いたのです。そして、
「おまえに一度だけ選ばせてあげるよ」
と言ったのでした。
「選ぶ? 何をだ」
「おまえの命そのものだよ」
意味がわかりません。困惑していると、いい表情だねえとフォビスは言いました。
「おまえは一応のところはアウィーコート王国の国王だ。その立場への敬意と、兄弟としてのせめてもの情で、おまえに選ばせてやると言っているのさ」
フォビスは唇の片端を釣り上げて残忍な笑みを浮かべます。
「アウィーコート王国の国王、ピスティに問う。もしも国民のすべてをエカタバガン帝国の奴隷として差し出すなら、おまえの命は助けてやる。もしも断るなら、おまえの命はこれまでだ。さあ、選べ。自分の命か、それとも国民か、どちらを差し出す」
「そんなこと――」
聞くまでもない――とピスティは断言しようとしたのですが、それを阻むようにフォビスが囁きました。
「もういいだろう。おまえの気高さは、今までの行いから思い知ったよ。自分が正しいと思ったことは貫き通す。その心構えと行動力には、誰もかなわない。私もだ。私はおまえにはかなわないよ。だから、もういいだろう。楽になろう。私はおまえを王としてではなく、ひとりの人間として、家族として見ている。その上で言っている。おまえには、もっと自分を大切にしてほしい。さあ、どうする。おまえはどちらを選ぶ。自分か、国民か」
「それは――」
「――と言いたいところだが」
何を思ったのか、フォビスは剣を引いたのです。そして、
「おまえに一度だけ選ばせてあげるよ」
と言ったのでした。
「選ぶ? 何をだ」
「おまえの命そのものだよ」
意味がわかりません。困惑していると、いい表情だねえとフォビスは言いました。
「おまえは一応のところはアウィーコート王国の国王だ。その立場への敬意と、兄弟としてのせめてもの情で、おまえに選ばせてやると言っているのさ」
フォビスは唇の片端を釣り上げて残忍な笑みを浮かべます。
「アウィーコート王国の国王、ピスティに問う。もしも国民のすべてをエカタバガン帝国の奴隷として差し出すなら、おまえの命は助けてやる。もしも断るなら、おまえの命はこれまでだ。さあ、選べ。自分の命か、それとも国民か、どちらを差し出す」
「そんなこと――」
聞くまでもない――とピスティは断言しようとしたのですが、それを阻むようにフォビスが囁きました。
「もういいだろう。おまえの気高さは、今までの行いから思い知ったよ。自分が正しいと思ったことは貫き通す。その心構えと行動力には、誰もかなわない。私もだ。私はおまえにはかなわないよ。だから、もういいだろう。楽になろう。私はおまえを王としてではなく、ひとりの人間として、家族として見ている。その上で言っている。おまえには、もっと自分を大切にしてほしい。さあ、どうする。おまえはどちらを選ぶ。自分か、国民か」
「それは――」
