
ここから始まる物語
第22章 最後の戦い
【誘惑】
ピスティは奇妙な気持ちになりました。
さっきまで燃えたぎっていた心が、急に醒めてしまったのです。
まわりでは、まだ兵士たちが戦っていますが、ピスティの心だけは、もう戦う気を失っているのです。
心が変わってしまった理由は、考えるまでもありません。
フォビスの言葉です。
確かに、ピスティは苦しい思いをしています。王としての立場をかなぐり捨てて、戦いから抜け出すことができれば、どれだけ楽になるでしょうか。そのためには国民も兵士も仲間たちも売り飛ばさなければなりませんが、今、この場でピスティが命を張って彼らを守ったとして、ピスティは何を得られるでしょうか。もちろん感謝はしてもらえるだろうし、国民はピスティを尊敬してくれるでしょう。
しかし、いくらピスティが王だといっても、治めているのは、しょせんはアウィーコート王国。小さな小さな国にすぎないのです。この場を乗り切って仲間から感謝されて、国民から尊敬されたとしても、お山の大将にすぎません。
そんな小さな意地のためにこれ以上戦う意味があるのでしょうか。
ピスティが迷っていると、フォビスがさらに囁きました。
「おまえはすぐれた人物だ。顔立ちもいい。王という立場にいなくても、いくらでも金儲けはできる。女も選び放題だろう。ならば王である必要はない。王という立場など、むしろ足枷でしかない。さあ、私のもとで楽になろうじゃないか」
フォビスの言葉は、甘く優しく、ピスティの耳をくすぐります。
「僕は――もう」
もう戦うのをやめるよ――とピスティが言おうとした時でした。
「ピスティ! 騙されないで!」
溌剌とした声が、耳に飛び込んできました。
ピスティは奇妙な気持ちになりました。
さっきまで燃えたぎっていた心が、急に醒めてしまったのです。
まわりでは、まだ兵士たちが戦っていますが、ピスティの心だけは、もう戦う気を失っているのです。
心が変わってしまった理由は、考えるまでもありません。
フォビスの言葉です。
確かに、ピスティは苦しい思いをしています。王としての立場をかなぐり捨てて、戦いから抜け出すことができれば、どれだけ楽になるでしょうか。そのためには国民も兵士も仲間たちも売り飛ばさなければなりませんが、今、この場でピスティが命を張って彼らを守ったとして、ピスティは何を得られるでしょうか。もちろん感謝はしてもらえるだろうし、国民はピスティを尊敬してくれるでしょう。
しかし、いくらピスティが王だといっても、治めているのは、しょせんはアウィーコート王国。小さな小さな国にすぎないのです。この場を乗り切って仲間から感謝されて、国民から尊敬されたとしても、お山の大将にすぎません。
そんな小さな意地のためにこれ以上戦う意味があるのでしょうか。
ピスティが迷っていると、フォビスがさらに囁きました。
「おまえはすぐれた人物だ。顔立ちもいい。王という立場にいなくても、いくらでも金儲けはできる。女も選び放題だろう。ならば王である必要はない。王という立場など、むしろ足枷でしかない。さあ、私のもとで楽になろうじゃないか」
フォビスの言葉は、甘く優しく、ピスティの耳をくすぐります。
「僕は――もう」
もう戦うのをやめるよ――とピスティが言おうとした時でした。
「ピスティ! 騙されないで!」
溌剌とした声が、耳に飛び込んできました。
