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第22章 最後の戦い

【決着】

 ピスティはふたたび、フォビスに剣を向けました。
「貴様の言葉など信じられるものか! いや、たとえ本当だろうと、お前なんかに僕はそそのかされたりはしない!」
 ピスティはフォビスに斬りつけました。フォビスがそれを受けて、がきん、という音が響きます。
「血迷ったか、ピスティ! 楽になろう」
「黙れ!」
 ピスティは、両手ではなく片手で、剣を振るいました。怪我をしている方の腕は、あえて使わないようにしたのです。
 そうしてみると、もちろん力こそ入らないものの、それまでにない素早さと自由さで剣を扱うことが出来ました。
 フォビスの額、脇の下、肘――鎧に覆われていないわずかな隙間に、次々と刃を叩きつけます。
「なんだと!」
 フォビスは防ぐ一方となりました。
 ピスティは攻め続けます。肘、脇の下、と続けざまに突きを見舞った時、フォビスはついに決定的な隙をさらけ出しました。
ピスティの切れ目のない攻撃に、フォビスがよろめいたのです。
「喰らえ!」
 ピスティは、がら空きになったフォビスの額に、力いっぱい剣を振り下ろしました。
「ぬああああああッ」
 フォビスは雄叫びをあげて、身体を翻し、そのまま地面に倒れ込みました。
「なぜだ。どうして私がおまえなんかに」
 フォビスは額から流れる血を抑えながら喘いでいます。
「貴様は自分の身を守るために、すべてを裏切った。僕だけじゃない。おまえの後ろ盾となっていた父も、そしてこの国も、国民も、すべてを裏切った。そんな男に僕は負けるわけにはいかない。僕には――」
 ピスティは、ちらりとレナの姿を見ました。レナは、庶民と共に、自分自身も剣を奮って敵の兵士と戦っています。
「僕には――守らなければならないものがあるからだ!」
「生意気なことを!」
 倒れていたフォビスは、声をわななかせて立ち上がると、ふたたびピスティに斬りかかってきました。

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