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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

 行く手が、やけに明るく見えてきました。
 アビナモスが笑みを浮かべました。
「もうすぐ森から抜けられる。そうしたら、味方がいる場所まで一気に走り抜けるぞ」
 そういったアビナモスは、コーリーを庇うつもりなのか、片腕をコーリーの背中に当てています。
「はい」
 触られたくもありませんでしたが、拒むこともできません。コーリーは仕方なく、素直に頷きました。
 ところが、です。
 もう少しで森から出られると思った時、森の外から軍隊が駆けつけてきたのでした。
 先頭に立っているのは、大きな梯子を武器替わりに持った巨漢でした。いつもピスティと一緒にいる男です。名前はライ。その巨体から繰り出される怪力が、彼の最大の武器です。その後には、アウィーコート王国の兵士たちが続いています。
「ピスティさま! 無事だか! 今助けに行くから頑張るだよ!」
 ライは田舎じみた口調で叫びながら、森の中へなだれ込んできます。
 ――今だ。
 コーリーは、ふと、そう思いました。
 アビナモスの手から離れるには、今が絶好のチャンスです。
 コーリーは、足を挫いたふりをして、わざと大きめの声で呻きました。
「痛い!」
 ハッとしたのはアビナモスだけではありませんでした。間近に迫ったライも、目を丸くしてこちらを見ています。
 ライは足を止めて、コーリーに声をかけてきました。
「あんた、アウィーコートで見たことあるだよ。どうしてこんな所にいるだ。攫われただか」
「私は――」
 コーリーは、ちらりとアビナモスを見ました。

 ※

 アビナモスはコーリーの目を見つめました。
 コーリーが声をあげさえしなければ、この巨漢に見つかることはなかったでしょう。かといって、痛みのあまり出てしまった声を、責めることはできません。

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