テキストサイズ

ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

 ピスティはライに笑みを返すと、それ以上は何も言いませんでした。ここで裏切られるなら、ピスティの、王としての資質もその程度だったということです。
 やがて、義勇兵の一人が、高らかな声をあげました。
「決めた!」
 どうしようというのでしょう。ピスティはすでに殺される覚悟を決めていますが、それでも庶民や兵士たちがどんなことを言うのかと考えると、胸いっぱいに不安が広がります。
 義勇兵はきっぱりと言いました。

「俺たちは、誰も売り飛ばしたりはしない。死ぬのも生きるのも、みんな一緒だ!」

 それに合わせるかのように、味方はいっせいに喚声をあげました。
 義勇兵が、さらに叫びます。
「強欲の夜事件で、俺たちは団結を手に入れたんだ! この最高の宝は、どんな強い敵にも負けない! いや、敵が強ければ強いほどに、その宝は輝きを増すのだ!」
 さっきよりも大きな喚声があがります。森に茂る草も木も枝も葉っぱも、その大声に震えています。
「ピスティ王に続け!」
 兵士も庶民もいっしょになって、ピスティのまわりに集まってきます。その中には、もちろんレナとライもいました。
「みんな・・・・・・」
 あまりの嬉しさに、鼻の奥がつんと痛みます。そんなピスティの背中に、ライの大きな手がそっと触れました。
「さあ、ピスティさま。みんなに命令するだよ」
 レナも、近くに来て言いました。
「みんな、戦いたくてうずうずしているわ」
 ピスティは深く頷くと、剣を振りあげて号令をかけました。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ