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第22章 最後の戦い

 ピスティの指示に、味方の士気はいっそう高まりました。
 しかし、戦いは士気だけでどうにかなるものではありません。すでに多くの仲間が倒れています。それに比べて、敵はほとんど減っていません。
 どれほど士気があがっても、数で圧倒的に劣る以上、苦しい戦いになるのは当然のことです。
 しかも、この戦いに限って言えば、なんの作戦もないのです。
 敵の包囲の輪は徐々に狭くなってきます。
 敵を突っ切るつもりで戦っていたので、前進しながらの戦いだったのですが、前に進む速さは明らかに鈍ってきています。
 仲間たちは背中を預け合い、全方位から押し寄せる敵をはね返そうとしますが、まったく刃が立ちません。
 仲間の誰もが、息を切らせ、汗を流し、血を滴らせながら奮戦しています。少しでも油断すれば、押しつぶされてしまうでしょう。
 ピスティも獣になったつもりで戦っていました。雄叫びをあげ、もう腕が痛むのも忘れて、両手で剣を握って、力任せに剣を薙ぎ、あるいは斬り下ろし、時には突き出していました。もちろん自分の身を守ることも忘れてはいません。が、ピスティは自分自身よりも、むしろ仲間を助けることに気を使っていました。仲間に向けられる槍や剣は、届く範囲ですべて弾き飛ばしていました。仲間が傷つくことが、ピスティにとっては何よりも悔しかったのです。
 しかし、ピスティたちの奮戦も、長くは続きませんでした。
 仲間は次々と倒れていき、戦っている者は、すでに半分より少なくなっています。しかも、生き残っている者は誰もが、重傷を負っています。
 ――もう駄目だ。
 敵の槍をかろうじてかわしながらも、ピスティの胸には諦めの気持ちが湧きつつありました。
 ところが、です。

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