テキストサイズ

ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

【ふたたび逆転】

 クリシーは、馬に乗っていました。まわりは、金色の防具に身を包んだ神の軍隊が取り巻いています。
 私はすべての意志に勝ったのだ――馬に揺られながら、クリシーは誇らしい気持ちで金色の軍隊を眺めています。
 この美しく逞しい軍隊は、クリシーの思いひとつで出現したものです。
 はじめは、誰も神の力を必要としていませんでした。絶対に自分たちの力で戦い抜くのだ、と決意する者ばかりでした。
 しかしクリシーだけは、神に祈り続けたのです。アウィーコートの人間の命が失われることをどうしても避けたい――その一心で。
 それが、とうとうかなったのです。アウィーコートのすべての人の、「神の力には頼らない」という決意に、「人々の命が失われることは避けたい」というクリシーの祈りが勝ったのです。
 その祈りがどれほど強いものだったのかは、神の軍隊を見ればわかります。
 これほど強く祈ることができたのは、まさしくクリシーが僧侶だったからでしょう。
 戦いが始まる前は、国の存亡がかかっている時に、僧侶である自分には何も出来ないのだ、という無力感の中に沈みこんでいましたが、こうして神の軍隊を出現させることが出来たことで、その思いも吹き飛びました。
 今なら胸を張って、私は僧侶である――と自慢できそうです。
 馬に乗りながら進んでいると、前方に森が見えてきました。
 が、どうも様子が変です。そこに軍隊がいることは間違いないのですが、激しい声と音が聞こえてきます。
 兵士たちが動き回っているところから見ても、戦いが起こっていることはわかります。
「神よ、アウィーコートの民を救いたまえ」
 クリシーが祈ると、神々たちは歩みを早めました。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ