ここから始まる物語
第6章 出逢い
「だから、言ったでしょ。私には過去がないの」
「からかうな!」
ピスティが怒鳴ると、それよりも大きな声で、少女も怒鳴りました。
「からかってなんかない! 本当よ!」
顔つきは、真剣そのものです。
「私が生まれたのは、ついさっきのこと。そして、私が生まれた瞬間に、あなたが崖の上から落ちてきたの。だから助けてあげたのよ」
「でも、どうやって」
崖から落ちてきた人間を受け止めるなんてことが、できるでしょうか。しかも、相手はピスティよりも小柄な少女です。
しかし少女は、ピスティの疑問に、あっさりと答えたのでした。
「魔法を使ったのよ」
「魔法だって?」
ピスティは息を飲みました。
魔法――。
それがどんなものか、ピスティは聞いたことがありました。まだ幼いころに、祖父が教えてくれたのです。
魔法とは、人を癒したり、反対に傷つけたり、自然にあるものを自在に操ったりする、便利な力のことです。もちろん、普通の人間がそんな力を使うことはできません。使えるのは、魔法使いと呼ばれる人びとのみ。
その話を聞いた時に、ピスティは祖父に言いました。
「そんなにすごい力があるなら、魔法使いをたくさん連れてくれば良い国になるね」
しかし、祖父は顔色を変えてピスティを叱ったのでした。
「それは駄目だ。何があっても、絶対に魔法を使ってはいかん。絶対にだ」
いつもは優しい祖父が、この時ばかりは怖い顔をしていたのを覚えています。
「どうして?」
恐る恐るピスティが尋ねると、
「魔法は、とても怖い力なんじゃ」
と祖父は答えたのでした。
「からかうな!」
ピスティが怒鳴ると、それよりも大きな声で、少女も怒鳴りました。
「からかってなんかない! 本当よ!」
顔つきは、真剣そのものです。
「私が生まれたのは、ついさっきのこと。そして、私が生まれた瞬間に、あなたが崖の上から落ちてきたの。だから助けてあげたのよ」
「でも、どうやって」
崖から落ちてきた人間を受け止めるなんてことが、できるでしょうか。しかも、相手はピスティよりも小柄な少女です。
しかし少女は、ピスティの疑問に、あっさりと答えたのでした。
「魔法を使ったのよ」
「魔法だって?」
ピスティは息を飲みました。
魔法――。
それがどんなものか、ピスティは聞いたことがありました。まだ幼いころに、祖父が教えてくれたのです。
魔法とは、人を癒したり、反対に傷つけたり、自然にあるものを自在に操ったりする、便利な力のことです。もちろん、普通の人間がそんな力を使うことはできません。使えるのは、魔法使いと呼ばれる人びとのみ。
その話を聞いた時に、ピスティは祖父に言いました。
「そんなにすごい力があるなら、魔法使いをたくさん連れてくれば良い国になるね」
しかし、祖父は顔色を変えてピスティを叱ったのでした。
「それは駄目だ。何があっても、絶対に魔法を使ってはいかん。絶対にだ」
いつもは優しい祖父が、この時ばかりは怖い顔をしていたのを覚えています。
「どうして?」
恐る恐るピスティが尋ねると、
「魔法は、とても怖い力なんじゃ」
と祖父は答えたのでした。