ここから始まる物語
第6章 出逢い
「苦しい! 離しなさいよ!」
少女が抵抗するので、ピスティは我に却って少女から離れました。
「きみの名前を聞きたい」
「私に、名前なんてないわ。さっきも言ったけど、私が生まれたのはついさっきのことなの」
最初は強気だった少女ですが、言葉の最後は声がしぼんでいました。まるですねているかのように、唇を尖らせています。やっぱり、そこに嘘はないようです。本当は記憶がなくて、それを認めたくないものだから「さっき生まれた」などと言っているのかもしれません。名前も、無いのではなく、思い出せないだけなのでしょう。どちらにせよ、名前がなくては呼ぶこともできません。
「それなら、僕が名前をつけるよ」
「ピスティが?」
「うん。例えば――」
ピスティは、ちょっと考えてから言いました。
「レナ、なんて名前はどうだい?」
「レナ?」
「そう。アウィーコート王国の言葉で、レナとは〝願い〟っていう意味なんだ」
「願いですって? どうしてそんな言葉を私の名前に?」
「だって、きみは僕の願いを二つも叶えてくれた。崖から落ちた時は助かりたいと思った。それをきみは叶えてくれた。それに、腕の怪我が治ったらどれほどいいかと、僕はいつも願っていた。それも、きみが叶えてくれた。そんなきみには、レナって名前がぴったりだと思ったんだ。どうかな」
少女は、一瞬笑顔を見せようとしたようでしたが、すぐにまた口を尖らせました。
少女が抵抗するので、ピスティは我に却って少女から離れました。
「きみの名前を聞きたい」
「私に、名前なんてないわ。さっきも言ったけど、私が生まれたのはついさっきのことなの」
最初は強気だった少女ですが、言葉の最後は声がしぼんでいました。まるですねているかのように、唇を尖らせています。やっぱり、そこに嘘はないようです。本当は記憶がなくて、それを認めたくないものだから「さっき生まれた」などと言っているのかもしれません。名前も、無いのではなく、思い出せないだけなのでしょう。どちらにせよ、名前がなくては呼ぶこともできません。
「それなら、僕が名前をつけるよ」
「ピスティが?」
「うん。例えば――」
ピスティは、ちょっと考えてから言いました。
「レナ、なんて名前はどうだい?」
「レナ?」
「そう。アウィーコート王国の言葉で、レナとは〝願い〟っていう意味なんだ」
「願いですって? どうしてそんな言葉を私の名前に?」
「だって、きみは僕の願いを二つも叶えてくれた。崖から落ちた時は助かりたいと思った。それをきみは叶えてくれた。それに、腕の怪我が治ったらどれほどいいかと、僕はいつも願っていた。それも、きみが叶えてくれた。そんなきみには、レナって名前がぴったりだと思ったんだ。どうかな」
少女は、一瞬笑顔を見せようとしたようでしたが、すぐにまた口を尖らせました。