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ここから始まる物語

第6章 出逢い

 いきなり、扉が開きました。
 もちろん、ピスティが開けたのではありません。レナも扉には手をかけていません。
 扉が、自然に開いたのです。しかも、勢いよく、大きな音を立てて。
 薄暗かった部屋の中へ、一瞬にして外の光が溢れます。
 ピスティは、眩しさに目を細めたものの、すぐに目は慣れました。が、目に飛び込んできた光景に、ピスティは息を詰まらせてしまいました。
 扉の向こうには、気味の悪い集団が押し寄せていたのです。
 集団は、揃いの鎧を身につけていて、手には剣や槍といった武器を持っています。まるで軍隊のようですが、ちっとも強そうではありません。というのも、彼らの体はみんなやせ細っていたのです。背丈も低くて、高い者でも、ピスティの胸ほどの高さしかありません。しかも、彼らが身につけているものは、どれもぼろぼろなのです。鎧はひびが入っており、剣は錆び付いており、槍は穂先が欠けています。
 戦って勝てない相手ではないでしょう。しかし、ピスティは彼らに恐れを抱きました。
 やせ細って背の低い彼らは、どいつも目ばかりがぎょろぎょろと大きいのです。白目には血管が浮いていて、中には、右目と左目が、まったく違う方向を向いている者もいます。肌は灰色で、吐く息はとても臭いのです。
「魔女」
「出た」
「殺す」
「逃がすな」
 集団は、拙い言葉を途切れ途切れに呟いています。ピスティはレナを背後に庇って、彼らに向かって怒鳴りつけました。
「誰だッ! おまえたちは!」
 その大声に、集団はみんなびくっと震えました。気の小さい連中のようです。が、その中でもっとも年寄と思われる老人が前に出てきて、ピスティに恭しく頭をさげました。この老人だけは、肝が座っているようです。
「わしらは、この森に住む神ですじゃ」
 老人の言葉に、ピスティはまた驚いてしまいました。
「神だって?」
 にわかには信じられません。こんなにやせ細って背が低くて目がぎょろぎょろとした神がいるでしょうか。しかも、数え切れないほどの集団です。

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