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ここから始まる物語

第7章 脱出

 レナの身体は華奢でした。痩せていて、でも柔らかくて、猫のようにくねくねしています。抱きとめていると暖かくて、ずっと抱きしめていたい気持ちになりました。
 気の強いレナも、さすがに怖かったのでしょう。しばらくの間、ピスティの胸にすがるようにして、体を震わせていました。
 そんなレナの頭を、ピスティは軽くさすりました。さらさらとした黒髪は、まるで川のせせらぎのようです。
「とにかく、ここから離れよう。また、何が襲ってくるかわからない」
「そうね。でも、どこに・・・・・・」
「それは、これから考えよう」
 ピスティとレナは、一緒に部屋から出ました。
 あらためて外に出てみると、さっきまでいた部屋が、レナの言った通り、本当に祠だったことがわかりました。
 四角い形の石の上に、ライオンのような聖獣の彫刻が載っています。
 祠の周辺だけは平地でしたが、その周りは森でした。
 上を見ると、高い崖が見えます。
 この崖の上から、ピスティは落ちてきたのでしょうか。
「この崖を登れればいいのだけど」
 ピスティが呟くと、
「見て。あそこに坂道があるわ」
 レナが、崖の麓あたりを指さしました。
「本当だ」
 まるで木にまとわりつく蔓のように、細い坂道が、崖の壁面を伝っています。
「あそこを行けば登れるんじゃないかしら」
「そうだね。行ってみよう」
 ふたりは、さっそくそこを目指して歩き始めました。

 ※

 坂道は、思ったよりもはるかに狭いものでした。
 背中を崖につけて、横向きに歩かなくてはいけません。一歩歩くごとに、足元の小石がぽろぽろと落ちていきます。

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