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ここから始まる物語

第7章 脱出

 それでも慎重に登っていくと、やっとてっぺんが見えてきました。
「もう少しだ」
 ピスティはレナを励ますつもりでそう言ったのですが、それがいけませんでした。
 気が緩んでしまったのです。
 ピスティは、足を滑らせてしまいました。
 声をあげるまもなく、ふたたび崖下へ真っ逆さま・・・・・・と思ったのですが、急に身体がふわりと浮いたかと思うと、ピスティはあっという間に崖の上にいました。
 何が起きたのか、一瞬わかりませんでした。が、目の前に、黒服に身を包んだ仮面の男がいるのをみて、やっと自分が助けられたことがわかりました。
 仮面の男は、フウでした。
「危機一髪」
 フウは、いつものように短い言葉をピスティにかけてくれました。あいかわらず単調な声だし、顔は仮面に隠れているので表情もわかりませんが、フウが喜んでくれていることが、ピスティにはわかりました。
 崖の上にいたのは、フウだけではありませんでした。
 ゲンとライの姿もありました。
「おお、ピスティさま。ご無事で何より」
 ゲンは、眼帯の下から涙をこぼし、
「助かって良かっただよ! また一緒に飯を喰えるだよ!」
 ライはでっかい図体を押しつけてきて、いきなりピスティに抱きつきました。
「よせ、苦しい」
 ピスティは抵抗しましたが、ゲンも抱きついてきたので、三人は絡まりあって、その場に転んでしまいました。フウだけは相変わらず、淡々とした様子でそんな三人を見守っています。
「みんなありがとう! 心配してくれたんだね」
土の上に仰向けに寝転んだまま、ピスティは仲間たちに感謝しました。

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