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ここから始まる物語

第7章 脱出

「至極当然」
 とフウが言いました。
「儀式を見物していた連中が噂をしていたのです。ピスティさまが崖から落ちたと。それで急いで駆けつけてみたのですが、お姿がなく、心配しました」
 ゲンはそう説明しました。
「そんで、俺たちは心配してただけど、助かってよかっただよう。――でも、残念だな」
 喜んでいたライの声が、最後に急にしゅんと萎んでしまいました。
「残念? 何が?」
 ピスティが訊くと、
「儀式の結果だ」
 とライは言いました。
「そうだ! 儀式はどうなったんだ!」
 ピスティは頭から水を被せられたような気持ちになって、上半身を起こしました。
 そうです。ピスティは儀式に望んでいる最中だったのです。次の王を決めるための儀式に・・・・・・。
 その儀式は、単に王位継承者を決めるためのものだけではなく、ピスティにとっては、兄との対決の場でもありました。
 隣に寝ていたライも、そしてゲンも、その場に身を起こしました。
 ゲンが、細い首を前に倒して、がっかりした様子で言いました。
「儀式の結果、次の王になるのは、兄上のフォビス様にお決まりになりました」
「やっぱり、そうか」
 ピスティの胸の中に、行きどころのない怒りが溢れてきましたが、その怒りはやがて悔しさに変わっていきました。
 しかし、無理もないでしょう。
 的当ての点数では、ピスティが遅れをとっていたのです。三本の矢のうち、最後の一本のゆくえによってはまだ勝ち目はあったのですが、ピスティは、その最後の一本を狼に向けて放ってしまったのです。

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