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ここから始まる物語

第8章 企みの底で

「やってやるよ」
 ピスティは、フォビスの顔を睨みつけました。
「そうかい。戦いに行かせる兵士は、すでに広場に待たせているからね。そいつらを連れて、エカタバガン軍と戦うんだ。頑張るんだよ、せいぜいね」
 ピスティは、もう返事をしませんでした。今は死罪をまぬがれることが第一です。いや、アウィーコート王国の民を敵から守ることが第一です。仲の悪い兄と張り合っている暇はありません。
 ピスティは部屋の扉を開けて廊下に出るなり、叩きつけるように扉をしめました。
 そしてピスティは広場へ行ったのですが・・・・・・。

 ※

 広場に集まっている兵士を見て、ピスティは絶望しました。
 なんと、そこに集まっていた兵士は、たったの百人だけだったのです。こんな少ない人数では、戦いになりません。しかも、みんな馬には乗っているものの、鎧も武器も、大したものは身につけていません。おまけに老人ばかりです。
 ピスティは、やっとフォビスが何を考えているのかわかりました。
 フォビスは、ピスティが邪魔なのです。だからずっと、殺してしまいたいと思っていたのでしょう。しかし、そうはできなかったのです。ピスティが家族だからです。家族を殺したのでは、フォビスの評判が悪くなってしまいます。たとえピスティが死罪になるようなことをしていたとしても、家族を殺してしまえば、少なからず良く思わない者が出てしまいます。
 しかし、戦いの中で死ぬのなら別です。
 フォビスの本当の狙いは、無理な戦いをさせることでピスティを死なせてしまうことにあるのでしょう。ついでに時間稼ぎもできるのですから、よく考えたものです。
「くそッ、くそッ、くそッ!」
 ピスティは地面に膝をついて、何度も何度も地面を拳で殴りつけました。

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