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ここから始まる物語

第9章 アウィーコート大戦役

 ピスティは二つ目の命令を出しました。
 兵士たちは建物を壊すのをやめ、建物の高い部分に身を隠しましす。その間にも、守備門は外から激しい攻撃を受け、轟音を響かせながら歪んでいきます。
 やがて、とうとう守備門が破られてしまいました。破られた門は、地面に倒れて、ぐわんぐわんと空気を震わせました。そのものすごい音に、ピスティは身が縮まる思いをしましたが、しっかりと足で地面を踏みしめて、揺るがない態度を見せました。
 破られた門の向こうには、エカタバガン軍の姿がありました。
 槍を構えた兵士が先頭に並んでいて、その後ろには馬に乗った兵士が控えています。
 ピスティは逃げ出したくなりましたが、唇を噛み締めて踏みとどまりました。これも、ゲンから教えられた作戦通りです。

 扉が破られたら、ピスティさまが囮になって敵を引き寄せるのです――。

 ピスティは敵に向かって叫びました。
「われこそは、アウィーコート王国の第二王子、ピスティだ! 来るなら来い!」
 しかし、敵は動きません。門の向こうにとどまったままです。

 ※

 どうしてエカタバガン軍は動かないのでしょう。
 その理由は、エカタバガン軍を率いている将軍が、怯えていたからです。
 将軍の名前は、アビナモス。
 奇妙な風貌の男でした。
 髪は長めでありながら、頭のてっぺんだけはつるりと禿げあがっています。頬はこけていて、とても貧弱そうです。
 覚えている方もおいででしょう。ピスティたちが、山賊と間違えてエカタバガン軍に手を出してしまった時、敵をまとめていた頭領です。
 その時のことを、アビナモスは忘れていなかったのです。

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