ここから始まる物語
第9章 アウィーコート大戦役
ついにエカタバガン軍が動き出したのです。
ピスティは、急に背中を向けると、一目散に逃げ出しました。しかし、怖いから逃げるのではありません。これも作戦のうちなのです。
ゲンはこう言っていました。
門が破られたら、遠慮はいりませぬぞ。エカタバガン軍を街の中に入れてしまうのです――。
エカタバガン軍は、槍を持った歩兵を先頭に、突撃してきます。しかし、その速さはさほどのものではありませんでした。なせなら、道路にはレンガの破片が散らばっていたからです。歩兵だけなら、多少足場が悪くても走れますが、馬ではそうはいきません。歩兵たちは、後ろに控えている騎馬隊が気兼ねなく馬を走らせることができるようにと、レンガをのけながら追ってくるのです。
敵が入ってきたら、今度は油をかけてやりなされ――。
ピスティは、すでに隠れさせていた兵士たちに向かって、命令しました。
「油だ!」
同時に、建物に隠れていた兵士たちが、小さめの樽を、いくつもいくつもエカタバガン軍の上へ投げ始めました。
樽は地面に落ち、あるいは兵士の鎧に当たって、砕け散ります。そして、中に入っていた油が、そこらじゅうにぶち巻かれます。兵士たちは滑ったり転んだりして、なかなか進めません。後ろからは、しびれを切らせたのか、騎馬隊が押し寄せてきています。
油を注いだら、あとはわかりますな――。
「ライ!」
ピスティは、仲間の名前を呼びました。
「任せるだよう!」
路地からライが姿をあらわしました。
ピスティは、急に背中を向けると、一目散に逃げ出しました。しかし、怖いから逃げるのではありません。これも作戦のうちなのです。
ゲンはこう言っていました。
門が破られたら、遠慮はいりませぬぞ。エカタバガン軍を街の中に入れてしまうのです――。
エカタバガン軍は、槍を持った歩兵を先頭に、突撃してきます。しかし、その速さはさほどのものではありませんでした。なせなら、道路にはレンガの破片が散らばっていたからです。歩兵だけなら、多少足場が悪くても走れますが、馬ではそうはいきません。歩兵たちは、後ろに控えている騎馬隊が気兼ねなく馬を走らせることができるようにと、レンガをのけながら追ってくるのです。
敵が入ってきたら、今度は油をかけてやりなされ――。
ピスティは、すでに隠れさせていた兵士たちに向かって、命令しました。
「油だ!」
同時に、建物に隠れていた兵士たちが、小さめの樽を、いくつもいくつもエカタバガン軍の上へ投げ始めました。
樽は地面に落ち、あるいは兵士の鎧に当たって、砕け散ります。そして、中に入っていた油が、そこらじゅうにぶち巻かれます。兵士たちは滑ったり転んだりして、なかなか進めません。後ろからは、しびれを切らせたのか、騎馬隊が押し寄せてきています。
油を注いだら、あとはわかりますな――。
「ライ!」
ピスティは、仲間の名前を呼びました。
「任せるだよう!」
路地からライが姿をあらわしました。