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第9章 アウィーコート大戦役

 ライは片手に松明を持っていて、飛び出してくるなり、その松明をエカタバガン軍に投げつけました。
 エカタバガン軍はたまりません。油まみれになっていた敵は、あっという間に火に包まれてしまいます。
 エカタバガン軍の隊列は乱れました。
 武器を投げ出し、叫び声をあげ、まるで身体中をかきむしるかのようにしながら、地面を転げまわります。
 乱れたエカタバガン軍に、今度はライが怪力で襲いかかりました。
 近くに転がっていた大きな梯子を両腕で抱えると、それを振り回し始めたのです。梯子は鉄でできているようで、炎に触れても燃えません、それにライの持ち前の怪力が加わっているので、兵士の身体に梯子が当たると、鎧が凹み、あるいは砕け、兵士の身体は塵のように弾き飛ばされます。
 これなら、いくらエカタバガン軍が大軍でも怖くありません。
 道の幅は、大人十人分が寝転がったくらいのもの。そして、その道の両側には、建物の一階より下が立ち並んでいます。それが邪魔になって、エカタバガン軍は横に広がることができません。
 しかも、道路にはレンガが散らばっているのです。歩兵のあとに続いていた騎馬隊も、まっすぐに進むことができません。馬に乗っている兵士は、必死に馬に鞭をくれますが、馬はレンガを踏まないようにと、慎重になっています。それに加えて、火だるまになった味方の歩兵が転げまわっているのです。一歩進むのもやっとの様子。
 漬け込むなら今でした。
「全軍、攻撃開始!」
 ピスティは叫びました。
 全軍――といっても、五十人しかいないのですが、そう言った方が、相手には多く聞こえるでしょう。
 ピスティの号令とともに、建物に隠れていた五十人全員が、武器を構えてエカタバガン軍の横から襲いかかります。

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