ここから始まる物語
第9章 アウィーコート大戦役
兵士の数は、相手の方が圧倒的に多いのです。いくらここで防いでも、焼け石に水。この場所が突破されるのは時間の問題です。
「みんな、逃げろ!」
ピスティはふたたび叫びました。しかし、やっぱり味方の兵士は逃げようとしません。
「おらは逃げねえだよ」
ライは顔をひきつらせながら、また梯子を持ちました。
「よせ! 血が抜けるぞ!」
ピスティは止めましたが、怪力のライを押しとどめることはできません。
これ以上味方を戦わせてはいけない――ピスティがそう思った時です。
突然、あたりが真っ白になりました。
音もなく、何かが見えたわけでもありません。なんの前触れもなく、あたりが真っ白になってしまったのです。
どうやら、白いものは煙のようでした。
息を吸い込むと咳が出ます。
目にも沁みて、涙が出てきます。
いきなりのことに、ピスティだけではなく、ライも兵士も、それから敵も、みんな混乱しているようです。悲鳴に戸惑いの色が混じり、どこかで同士討ちも起きているようです。
いったい何が起きたのでしょう。ピスティは、目がしみるのを我慢して、白い闇を見つめました。
すると、あたりを覆う真っ白な煙の中から、煙よりもさらに白い顔が、ぬっと出てきました。
「逃走準備」
と白い顔は言いました。
「フウ!」
その顔は、間違いなくフウでした。この煙は、フウが巻き起こしたのでしょう。
この煙が晴れない限りは、戦いどころではありません。
「ありがとう、フウ!」
味方を逃がすなら今のうちです。しかし、普通に退却を命令しても、誰も素直にそれに従いませんでした。
「みんな、逃げろ!」
ピスティはふたたび叫びました。しかし、やっぱり味方の兵士は逃げようとしません。
「おらは逃げねえだよ」
ライは顔をひきつらせながら、また梯子を持ちました。
「よせ! 血が抜けるぞ!」
ピスティは止めましたが、怪力のライを押しとどめることはできません。
これ以上味方を戦わせてはいけない――ピスティがそう思った時です。
突然、あたりが真っ白になりました。
音もなく、何かが見えたわけでもありません。なんの前触れもなく、あたりが真っ白になってしまったのです。
どうやら、白いものは煙のようでした。
息を吸い込むと咳が出ます。
目にも沁みて、涙が出てきます。
いきなりのことに、ピスティだけではなく、ライも兵士も、それから敵も、みんな混乱しているようです。悲鳴に戸惑いの色が混じり、どこかで同士討ちも起きているようです。
いったい何が起きたのでしょう。ピスティは、目がしみるのを我慢して、白い闇を見つめました。
すると、あたりを覆う真っ白な煙の中から、煙よりもさらに白い顔が、ぬっと出てきました。
「逃走準備」
と白い顔は言いました。
「フウ!」
その顔は、間違いなくフウでした。この煙は、フウが巻き起こしたのでしょう。
この煙が晴れない限りは、戦いどころではありません。
「ありがとう、フウ!」
味方を逃がすなら今のうちです。しかし、普通に退却を命令しても、誰も素直にそれに従いませんでした。