ここから始まる物語
第9章 アウィーコート大戦役
ピスティとライとフウは、レンガ塀に背中をつけていますが、まるでそれを取り囲むかのように、敵の騎兵が半円を描いているのです。
煙で景色が見えなくなっている間に、ピスティは仲間の兵士を逃がすことに成功しましたが、敵も、その間に立ち直ってしまったようです。
さすがに、これまででしょうか。
「フウ、ライ、すまない。お前たちは逃げてくれ」
「そんなこと、できねえだよ」
とライは声をあげ、
「時期尚早」
とフウは相手にしません。それが嬉しく、また、いつも守られてばかりの自分に、ピスティは情けない気持ちになりました。しかし、今は落ち込んでいる場合ではありません。せめてライとフウにだけは助かってもらわなくてはいけません。
といっても、どうしたらそんなことができるのでしょうか。
考えをめぐらせようとした時です。思いもしないことが起こりました。
※
アビナモスは怒っていました。
門を破ったまでは良かったのですが、それからまったく街の中に攻め込むことができないのです。アウィーコート程度のちっぽけな国を相手に手間取っているようでは、皇帝に合わせる顔がありません。
アビナモスは軍隊の後ろの方にいたので、どうして進むことができないのかわかりません。
しかし、斥候の報せによって、アウィーコートの連中が火をつけたり煙を起こして抵抗していることを知りました。
「鬱陶しい連中だッ」
アビナモスは、拳で自分の太ももを思いきり殴りつけました。
火をつけるにしろ、煙で巻くにしろ、大軍を前にしてはそれほど意味のない作戦です。単なる時間稼ぎにしかなりません。
――待てよ。
ふと、アビナモスは考えました。
煙で景色が見えなくなっている間に、ピスティは仲間の兵士を逃がすことに成功しましたが、敵も、その間に立ち直ってしまったようです。
さすがに、これまででしょうか。
「フウ、ライ、すまない。お前たちは逃げてくれ」
「そんなこと、できねえだよ」
とライは声をあげ、
「時期尚早」
とフウは相手にしません。それが嬉しく、また、いつも守られてばかりの自分に、ピスティは情けない気持ちになりました。しかし、今は落ち込んでいる場合ではありません。せめてライとフウにだけは助かってもらわなくてはいけません。
といっても、どうしたらそんなことができるのでしょうか。
考えをめぐらせようとした時です。思いもしないことが起こりました。
※
アビナモスは怒っていました。
門を破ったまでは良かったのですが、それからまったく街の中に攻め込むことができないのです。アウィーコート程度のちっぽけな国を相手に手間取っているようでは、皇帝に合わせる顔がありません。
アビナモスは軍隊の後ろの方にいたので、どうして進むことができないのかわかりません。
しかし、斥候の報せによって、アウィーコートの連中が火をつけたり煙を起こして抵抗していることを知りました。
「鬱陶しい連中だッ」
アビナモスは、拳で自分の太ももを思いきり殴りつけました。
火をつけるにしろ、煙で巻くにしろ、大軍を前にしてはそれほど意味のない作戦です。単なる時間稼ぎにしかなりません。
――待てよ。
ふと、アビナモスは考えました。