ここから始まる物語
第10章 裏切り者
「それもありましょう。しかし、それだけではありません。考えてみてくだされ。国を滅ぼされたくないことは、王さまも、前の王さまも同じこと。ですから、アマヤイシンに助けを求める必要があったのは本当だったはず。しかし、です」
ゲンが何を言おうとしているのか、ピスティにはわかりません。ただ黙って、ゲンの言葉の続きを待つしかありませんでした。
「アマヤイシンに助けを求めるのだとすれば、どのくらいの時間がかかりましょうか。行くのに一日。事情を説明してわかってもらうのに一日、帰ってくるのに一日と考えてみても、それだけで三日はかかるのです。さらに、アマヤイシンが戦いの準備をするのに一日、軍隊を出してこちらへやって来るのに一日と考えてみてくだされ。そうすると、全部で五日もかかるのでございます」
確かにそうです。今回の戦いでは偽物のアマヤイシン軍で何とか騙すことができましたが、本物のアマヤイシン軍を待つのだとしたら、もっと時間がかかります。
「しかし、たった百人では、五日も頑張ることはできなかったでしょうなあ」
それも、ゲンの言う通りです。ほかの誰でもない、ピスティ自身が、身をもってそれを知っています。
「ということは――」
ゲンが鋭い視線をピスティに寄越しました。
「――王さまも、お父上も、はじめから国のことなど少しも考えていなかったということになります」
「なんだって?」
そんなことがあるでしょうか。確かに、父や兄は、ピスティから見れば憎い奴ですが、国をまとめるためには大事な存在です。そして、父も兄も、自分が生きていくためには国を滅ぼすわけにはいかなかったはずです。
なのに、なぜ父と兄は、国を見捨てるようなことを考えたのでしょうか。
ゲンが何を言おうとしているのか、ピスティにはわかりません。ただ黙って、ゲンの言葉の続きを待つしかありませんでした。
「アマヤイシンに助けを求めるのだとすれば、どのくらいの時間がかかりましょうか。行くのに一日。事情を説明してわかってもらうのに一日、帰ってくるのに一日と考えてみても、それだけで三日はかかるのです。さらに、アマヤイシンが戦いの準備をするのに一日、軍隊を出してこちらへやって来るのに一日と考えてみてくだされ。そうすると、全部で五日もかかるのでございます」
確かにそうです。今回の戦いでは偽物のアマヤイシン軍で何とか騙すことができましたが、本物のアマヤイシン軍を待つのだとしたら、もっと時間がかかります。
「しかし、たった百人では、五日も頑張ることはできなかったでしょうなあ」
それも、ゲンの言う通りです。ほかの誰でもない、ピスティ自身が、身をもってそれを知っています。
「ということは――」
ゲンが鋭い視線をピスティに寄越しました。
「――王さまも、お父上も、はじめから国のことなど少しも考えていなかったということになります」
「なんだって?」
そんなことがあるでしょうか。確かに、父や兄は、ピスティから見れば憎い奴ですが、国をまとめるためには大事な存在です。そして、父も兄も、自分が生きていくためには国を滅ぼすわけにはいかなかったはずです。
なのに、なぜ父と兄は、国を見捨てるようなことを考えたのでしょうか。