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ここから始まる物語

第10章 裏切り者

 ゲンは一喝しました。
 本当なら、ゲンは城の中のことに口出しできる立場にはありません。庶民にすぎないからです。が、ピスティと仲がいいために、こっそりと口を出すことがあります。
 兵士も、ゲンに怒鳴られる筋合いなどありませんから突っぱねてしまっても良かったのですが、ゲンが王子であるピスティの友人であることと、一喝の声がよほど恐ろしかったのでしょう。兵士はびくり体を震わせました。
「発見優先」
 フウは、裏切り者を見つけることが先だと言っています。
「そうだだよ。まずは裏切り者を見つけるだよ」
 ライも意気込んでいます。
 三人の仲間たちは、ピスティの知らないところで何ごとか企みをしていたようです。それがどんなことなのか、ピスティは知りません。が、

 王さまがそう仰っていました――。
 裏切り者の言葉を信じるかッ――。

 という先ほどのやり取りから、裏切り者が誰であるかはわかりました。
「追跡開始!」
 さっそく裏切り者を探そう、というフウのひと声に、ライもゲンも応じて、すぐに牢から駆け出しました。ピスティも、それに続きます。

 ※

 牢から出ると、街を行き交う人びとに、三人は裏切り者のゆくえを尋ねました。
 行き先は、すぐにわかりました。みんな、裏切り者のことを良く思っていなかったということでしょう。
 裏切り者は、城下町から北の門へ向かったとわかりました。
 仲間三人とピスティは、全力で北の門へ走ります。
 やがて、門が見えてきました。エカタバガン軍が壊した門です。まだ破れたままで、直っていません。

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