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ここから始まる物語

第10章 裏切り者

 急に身体が軽くなったかと思うと、どすんッという衝撃が走りました。
 びっくりして辺りを見回すと、ピスティと仲間たちは、いつの間にか門の前にいました。
 そして後ろから、

「あッ」

 という声。
 振り返ると、さっきまで追っていたはずの父と兄の姿があります。
 何が起きたのか、いくら考えてもわかりません。ピスティたちは、いつの間にか父と兄を追い越して、門の前に先回りしていたのです。
 不思議でなりません。頭の中を整理しようとしていると、遠くから透き通る声が聞こえました。

「ピスティ!」

 見ると、すぐに近くに、少女の姿がありました。
 白い衣に身を包んだ、小柄な少女です。白い肌に黒い髪。つんと尖った、つぼみのような唇。目尻が釣り上がった、気の強そうな二重の目、その目がくるくると動くさまは、まるで子猫のよう。
「レナ!」
 ピスティは少女の名を呼びました。
「なんでここにいるんだい。僕たちは、どうして一瞬でここへ移動してしまったのだろう」
 わからないことがたくさんあって、何を尋ねれば良いのかも分からなかったピスティですが、
「私、魔法使いだから」
 というレナの一言で、すべて納得できました。つまり、フォビスたちを追い越すことができたのも、レナが現れたのも、魔法の力によるもの、ということでしょう。
 そうと分かれば、もう戸惑うことはありません。
 ピスティはレナに「ありがとう」と微笑みかけると、後ろからやってくる兄に向かって、剣をひと薙ぎしました。
「くッ」
 兄は呻き声をあげて、足を止めました。

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