ここから始まる物語
第10章 裏切り者
ピスティは身をよじってライの手を振りほどこうとしましたが、その怪力に逆らうことはできませんでした。
「落ち着くだよ」
ライは、その大きな腕でピスティの体を包み込みました。
「形だけでも、フォビスさまは王様だ。ここで傷をつけちまったら、ピスティさまが、あとでどんな罪に問われるかわからねえ」
「じゃあ、僕の悔しさを水に流せって言うのかッ! ずっと侮辱されてきて、そんなことができるかッ!」
暴れだしたい気持ちでいっぱいでしたが、ライに体を抑えられていてはそれもできません。
「水に流すのではございませぬ」
庶民に決めてもらうのです――とゲンが言いました。
「庶民に?」
「そうです。王を傷つけてはならぬ理由は、ひとえに『王を尊ばねばならない』という決まりがあるから、にすぎませぬ。もっとも、王でなくても、傷つけれて良い人間はおりませぬが・・・・・・。それはともかく、いくら王とはいえ、庶民から慕われていなければ、形だけのもの。王に復讐したいと考えるならば、まずは王を形だけにすることです」
怒りで頭がいっぱいになっていたピスティでしたが、押さえつけられていて身動きができないことと、悔しさを晴らすことをゲンが考えてくれていることで、この場は落ち着きを取り戻しました。
ライも、ピスティが冷静になったことを察したのでしょう。ピスティを包み込んでいた腕をほどきました。
ピスティは深く息を吐くと、フォビスへ正面から詰め寄りました。
「これから城下街の広場へ来てもらう。そこで庶民の審判をあおごう。おまえが、心から自分にこそ王の素質があると言いきれるなら、文句はないはずだ。いいな?」
「落ち着くだよ」
ライは、その大きな腕でピスティの体を包み込みました。
「形だけでも、フォビスさまは王様だ。ここで傷をつけちまったら、ピスティさまが、あとでどんな罪に問われるかわからねえ」
「じゃあ、僕の悔しさを水に流せって言うのかッ! ずっと侮辱されてきて、そんなことができるかッ!」
暴れだしたい気持ちでいっぱいでしたが、ライに体を抑えられていてはそれもできません。
「水に流すのではございませぬ」
庶民に決めてもらうのです――とゲンが言いました。
「庶民に?」
「そうです。王を傷つけてはならぬ理由は、ひとえに『王を尊ばねばならない』という決まりがあるから、にすぎませぬ。もっとも、王でなくても、傷つけれて良い人間はおりませぬが・・・・・・。それはともかく、いくら王とはいえ、庶民から慕われていなければ、形だけのもの。王に復讐したいと考えるならば、まずは王を形だけにすることです」
怒りで頭がいっぱいになっていたピスティでしたが、押さえつけられていて身動きができないことと、悔しさを晴らすことをゲンが考えてくれていることで、この場は落ち着きを取り戻しました。
ライも、ピスティが冷静になったことを察したのでしょう。ピスティを包み込んでいた腕をほどきました。
ピスティは深く息を吐くと、フォビスへ正面から詰め寄りました。
「これから城下街の広場へ来てもらう。そこで庶民の審判をあおごう。おまえが、心から自分にこそ王の素質があると言いきれるなら、文句はないはずだ。いいな?」