ここから始まる物語
第10章 裏切り者
ふふふふ、とフォビスが静かに笑います。
「王である私に逆らったのはまずかったようだね。おまえは――」
フォビスの視線が、ピスティの顔に刺さります。
「――反逆罪で死刑だ。それから――」
ピスティを睨んでいたフォビスは、今度は、周囲を囲む民衆たちに、その凶悪とも言える視線を向けました。
「貴様らも全員処刑だ!」
はははははは――とフォビスは狂ったように笑います。
民衆は一瞬にして青ざめ、中にはその場から逃げ出す者さえいました。
ところが、です。
民衆の中から、一人の男が、前へ出てきました。
僧衣を来ているところを見ると、きっと教会の者でしょう。
どことなく、見覚えのある顔でした。
「誰だ、おまえは」
まったく怖じける気配を見せないその男に対して、フォビスが尋ねました。
男は、ピスティたちの前まで来ると、一度、恭しく頭をさげました。
「わたくしの名は、クリシーといいます」
「聞いたことがないねえ」
「初めて名乗りましたので」
「何者だ」
「わたくしは――」
的当ての審判を務めた僧侶でございます――と男は言いました。
「ああッ!」
ピスティはつい声を上げてしまいました。道理で見覚えがあったわけです。次の王を決める儀式の時に、点数を告げていたのは、この男だったのです。でも、その時にしか見たことがなかったので、忘れてしまっていたのでした。
審判役の僧侶と聞いて、フォビスの表情がわずかに変わりました。
「審判役が、何を言おうというのだ」
「王である私に逆らったのはまずかったようだね。おまえは――」
フォビスの視線が、ピスティの顔に刺さります。
「――反逆罪で死刑だ。それから――」
ピスティを睨んでいたフォビスは、今度は、周囲を囲む民衆たちに、その凶悪とも言える視線を向けました。
「貴様らも全員処刑だ!」
はははははは――とフォビスは狂ったように笑います。
民衆は一瞬にして青ざめ、中にはその場から逃げ出す者さえいました。
ところが、です。
民衆の中から、一人の男が、前へ出てきました。
僧衣を来ているところを見ると、きっと教会の者でしょう。
どことなく、見覚えのある顔でした。
「誰だ、おまえは」
まったく怖じける気配を見せないその男に対して、フォビスが尋ねました。
男は、ピスティたちの前まで来ると、一度、恭しく頭をさげました。
「わたくしの名は、クリシーといいます」
「聞いたことがないねえ」
「初めて名乗りましたので」
「何者だ」
「わたくしは――」
的当ての審判を務めた僧侶でございます――と男は言いました。
「ああッ!」
ピスティはつい声を上げてしまいました。道理で見覚えがあったわけです。次の王を決める儀式の時に、点数を告げていたのは、この男だったのです。でも、その時にしか見たことがなかったので、忘れてしまっていたのでした。
審判役の僧侶と聞いて、フォビスの表情がわずかに変わりました。
「審判役が、何を言おうというのだ」