ここから始まる物語
第10章 裏切り者
「おそれながら、フォビス王の言葉には、一部誤りがありましたので、それを訂正させて頂きたく」
「私の言葉に誤りだって? どんな誤りがあるというんだ」
大勢の人間から処刑を望まれているフォビスにとって、自分の身を守る最後の砦は「王」という身分だけです。フォビスは、それを突き崩されるのを避けようとしている様子。声も表情もこわばっています。
「では申し上げます」
クリシーはふたたび頭をさげました。
「フォビスさまのおっしゃる通り、王子が二人以上いる場合は、儀式によって、次の王が選ばれます。それに間違いはありません。そして、的当てで最も高い点数を取った者が勝者となり、次の王になります。それにも間違いはございません」
「ならば――」
「しかし――」
フォビスが口を挟もうとしたのを、クリシーは遮りました。
「儀式は、単に勝敗を決めるためのものではありません。王としての素質があるかどうかを見極める儀式でもあるのです」
「素質だって?」
フォビスの眉間に、不安の色が刻まれます。
その言葉に、ピスティも息が止まるのを感じました。たしかに、そういう話は聞きました。しかも、それを話していたのは、ほかでもない、父であり、先代の王であるブロミアだったのです。
儀式の前日、兄と喧嘩をした時に、ブロミアはその話をしていました。
「そう。その意味でいうなら――」
フォビスさまには王としての素質があるとは申せません――とクリシーは言いました。
「素質がないだと? 馬鹿なことを言うな! 勝者が王になることに間違いはないと言ったではないか!」
「たしかに申し上げました。しかし、勘違いなされてはいけません。勝者は、王になる資格は認められても、〝資質〟があることは認められない場合があります。そしてフォビスさまは〝素質〟という面から見るなら、王として失格していると言わざるを得ません」
「私の言葉に誤りだって? どんな誤りがあるというんだ」
大勢の人間から処刑を望まれているフォビスにとって、自分の身を守る最後の砦は「王」という身分だけです。フォビスは、それを突き崩されるのを避けようとしている様子。声も表情もこわばっています。
「では申し上げます」
クリシーはふたたび頭をさげました。
「フォビスさまのおっしゃる通り、王子が二人以上いる場合は、儀式によって、次の王が選ばれます。それに間違いはありません。そして、的当てで最も高い点数を取った者が勝者となり、次の王になります。それにも間違いはございません」
「ならば――」
「しかし――」
フォビスが口を挟もうとしたのを、クリシーは遮りました。
「儀式は、単に勝敗を決めるためのものではありません。王としての素質があるかどうかを見極める儀式でもあるのです」
「素質だって?」
フォビスの眉間に、不安の色が刻まれます。
その言葉に、ピスティも息が止まるのを感じました。たしかに、そういう話は聞きました。しかも、それを話していたのは、ほかでもない、父であり、先代の王であるブロミアだったのです。
儀式の前日、兄と喧嘩をした時に、ブロミアはその話をしていました。
「そう。その意味でいうなら――」
フォビスさまには王としての素質があるとは申せません――とクリシーは言いました。
「素質がないだと? 馬鹿なことを言うな! 勝者が王になることに間違いはないと言ったではないか!」
「たしかに申し上げました。しかし、勘違いなされてはいけません。勝者は、王になる資格は認められても、〝資質〟があることは認められない場合があります。そしてフォビスさまは〝素質〟という面から見るなら、王として失格していると言わざるを得ません」