ここから始まる物語
第10章 裏切り者
「どういうことだ! なぜそうなる!」
フォビスは顔中に汗をにじませながら、クリシーに詰め寄りました。しかしクリシーは、少しも動じません。
「あの儀式の最後に、狼が現れたことは、覚えておりますか」
「もちろんだ」
「その狼に対して、フォビスさまは何もなさりませんでした。王には勤めがいくつもありますが、その重要なひとつが、庶民を守ることです」
フォビスはなにか言葉を返そうとしている様子でしたが、唇を震わせるだけで、言葉が出てこない様子です。
クリシーはさらに話を続けます。
「一方で、ピスティさまは、儀式に勝利するために必要な矢をお使いになって、狼を撃退いたしました。これは立派な判断と思われます」
「それは不公平な言い方だ。その時、私はすでに矢を持っていなかったのだからな」
「それは承知しています。しかし、何も矢を使う必要はありません。狼は剣でも撃退できますし、あるいは何も持たなくても、民衆を少しでも助けようと行動することはできるはずです。実際、ピスティさまはそうされておられました」
「ピスティが・・・・・・」
「そうです。ピスティさまの矢も、狼にあたりこそすれ、倒すことまでは出来なかったのです。さらに暴れようとする狼に、ピスティさまは剣で立ち向かっておられました。しかも、最後は、崖から落ちてしまったのです。さて、フォビスさま」
「なんだ」
「その時、フォビスさまは、どうされていたでしょうか」
「私は・・・・・・私は・・・・・・」
フォビスは顔中に汗をにじませながら、クリシーに詰め寄りました。しかしクリシーは、少しも動じません。
「あの儀式の最後に、狼が現れたことは、覚えておりますか」
「もちろんだ」
「その狼に対して、フォビスさまは何もなさりませんでした。王には勤めがいくつもありますが、その重要なひとつが、庶民を守ることです」
フォビスはなにか言葉を返そうとしている様子でしたが、唇を震わせるだけで、言葉が出てこない様子です。
クリシーはさらに話を続けます。
「一方で、ピスティさまは、儀式に勝利するために必要な矢をお使いになって、狼を撃退いたしました。これは立派な判断と思われます」
「それは不公平な言い方だ。その時、私はすでに矢を持っていなかったのだからな」
「それは承知しています。しかし、何も矢を使う必要はありません。狼は剣でも撃退できますし、あるいは何も持たなくても、民衆を少しでも助けようと行動することはできるはずです。実際、ピスティさまはそうされておられました」
「ピスティが・・・・・・」
「そうです。ピスティさまの矢も、狼にあたりこそすれ、倒すことまでは出来なかったのです。さらに暴れようとする狼に、ピスティさまは剣で立ち向かっておられました。しかも、最後は、崖から落ちてしまったのです。さて、フォビスさま」
「なんだ」
「その時、フォビスさまは、どうされていたでしょうか」
「私は・・・・・・私は・・・・・・」