❇️片暉の残照❇️
第7章 穏やかな日々と子守唄
商人の彼とサンドイッチを食べたあの裏庭に向かうと――――…、何もないガランとした空間が広がっている。
「噴水――――…も、冬支度ね」
噴水の近くまで行くと、薔薇をモチーフとした装飾に目を奪われる。
「こんな細かい彫刻がなされた噴水だったのね……」
噴水の淵に座り、ワルツの曲を思い浮かべ体を揺らす――――が、徐々にテンポが遅れぎこちなくなる!
「――――聞きなれない曲だと…やっぱり難しいなぁ」
そこで私は幼いときにお母さんが歌ってくれた子守唄を口ずさむ――――。
「愛しき――――愛しき
大輪よ届け…
寄り添い――――寄り添い
重き空に…紅(くれない)…
守りし――――守りし
苦き水…紫(むらさき)…
願いし――――思い
愛する…我が宝(たから)――――」
私は体を揺らし、お母さんの子守唄を歌いワルツのステップを踏む。
「愛しき――――…愛しき…大輪よ~届け…」
すると、パチパチと噴水の反対側から拍手が聞こえた!
「///――――あ…?」
私は恥ずかしさのあまりステップを止めてキョロキョロと辺りを見渡す!