❇️片暉の残照❇️
第14章 赤い魔の手
王宮の地下牢獄は――――…俺にピッタリな…
暗く…冷たい場所だった。
「なぜ――――ここに来たか分かっているんだろ?」
俺はうなずくと質問してきた男に向く。
「誰に言われて――――ハジロ公爵家のご令嬢を拉致した?」
「…誰にも――――」
言うわけないだろう――――…
あの方の名前を出して…裏切るなんて考えたことも無い――――…
それに、ハジロ嬢に声をかける前に…
執事の仕事を止めると告げている――――。
もちろん、主も旦那様も……引き止めやしなかった。
それでも――――…俺は…
ハジロ嬢を彼女の視界から消す事だけを考え――――…賊まで雇ったのだから。
「――――あの娘の髪が欲しかったんだ…」
「は?」
看守の兵は俺の発言に驚きの顔を見せる――――。
「髪――――って…お前…」
「あの色は――――…ズルいだろ?」
「ズルいって……」
牢屋の壁に寄りかかり…天井を見上げる…。
――――ズルい…
そう、ハジロ嬢の黄金色の髪は…
ズルすぎる…。