❇️片暉の残照❇️
第16章 子守唄とバラの秘密
微かに聞こえる…懐かしい故郷の子守唄のリズム――――。
「テイス…様の…部屋から?」
ハジロ公爵の奥方でもあるローラ様が学ばれたのは、ミュトロン領にある学園だとは聞いていたが…
学園のある地区からかなりかなり離れた…アヌイのローカル子守唄を…奥方は知っていたのだろうか……?
しかし、耳をすませ聞いていると…
メロディこそは懐かしいアヌイのメロディだったが、歌詞に心臓を捕まれた!
「♪―――愛しき、愛しき
大輪よ届け
寄り添い、寄り添い
重き空に紅
守りし、守りし
苦き水…紫
願いし思い
愛する我が宝――――♪」
不思議と同じ歌詞を繰り返すその子守唄は…
ポルギの動揺を誘うのには十分だった。
驚きのあまり…扉の前で立ち尽くしていると――――…
子守唄は徐々に弱々しく…静かになり…
途切れ途切れになり…歌のメロディが崩れだし――――…今にも止まりそうだった。