❇️片暉の残照❇️
第18章 疑念の春
「そう言えば――――…王宮の植物園…取り壊しが決まったみたいだな」
――――え?
お兄様の言葉に蜂蜜の香りが口の中から消えた。
「え――――…あの…植物園が?どうして!?」
先日も研究所の先輩たちと荒らされた場所の直しをしたばかりだと言うのに?
冬の間は、植物でパーティーをする不届き者もおらず穏やかだったが、最近パーティーの回数が増え…植物を荒らす貴族が現れ始めた。
「植物園を潰して――――王母宮を建設するってはなしだよ」
「王母…宮?」
“王母”の言葉にロミ様が顔色を曇らせる。
「俺の――――義母がね…王政に提案したみたいなんだ……」
お兄様はロミ様の様子を見てため息をつく。
「“乱れた行いで神聖なる植物園が壊れていくのは忍びない…ならば、今後の王母が安全かつ快適に聖母として生涯をまっとうできる場所の確保を優先すべき――――…”だっけ?」
大臣から回ってきて書類に、そう書かれていたのかお兄様は思い出すように王母宮の建設理由を語る…。
「“乱れた場所”って…自分がそう…仕向けたのに――――…」
植物園を乱れた場所にし、王宮の厄介場所に作り上げたうえで――――、管理に手を焼くならばと、“王母宮”の提案をする…。
地に落ちた場所が…生まれ変わるならば…と、二つ返事で王政はこれを了承する……。