❇️片暉の残照❇️
第18章 疑念の春
「キャロル様か――――…家族で植物園に行ってたもんな…」
「ああ……真ん中に大きな木があってな…そこに登りたいって言うと、慌てて止められたのを覚えているよ……」
ロミは植物園のある方を見てため息をついた。
「そう言えば、あの木――――…パーティーで酔っ払った、どこぞの王族が…登って落ちた事で“危険だ”って、斬り倒されんだよ…無論――――立ち入り禁止の場所の大木だったけど…問答無用だったらしい」
思い出の木すら……王族の一声で消えてしまう実情にロミは切なくなった。
「お父様とお母様が出会ったのも…植物園だって言っていたから――――…レミ義母様が快く思っていなかったのは知っていたけど…綺麗な思い出がけなされていく気持ちだよ」
「しかし、残酷だな――――その、植物園の取り壊しの許可にサインをするのが…お前ってのもの…」
先日、提案書類の中に植物園の取り壊しの書類があり…老朽化により建て替えだとおもい案件を通したが――――…そのあとすぐに、その跡地に“王母宮”建設の許可書類があと付けて降ってきたのだ。
許可出来ないと突っぱねたが――――対の書類だと無理やりねじ込まれ…後はロミのサインを待つばかりとなっているのだ。