❇️片暉の残照❇️
第3章 不思議な娘
「ニコル…お客様かしら――――?」
馬車には家名を表す紋章が付いておらず、誰が来たのかが分からなくなっていた。
「商業関係かしら?あ――――、そういえばそろそろお父様に頼んでいた図鑑が届く頃じゃなかったかな?!ニコル!図鑑が届いたのかも!取りに行かないと!」
私はバラ園に向かおうとしていた足を邸に向け、駆け出そうとした!
しけかし、「テイス様!」と、止められる!
「テイス様は先にバラ園にお向かいください――――私が取ってきます!待ち遠しいのは分かっておりますが…走り出すなんて…はしたない上に転んで怪我でもしたらど~するんですか?」
ニコルの小言が始まり私は固まる……。
この間、温室でついつい走ってしまい……転んだばかりだったのだ。
「は、はい――――…では、お願いします……バラ園に先に行ってます」
私は渋々バラ園に向かうことにした。