
❇️片暉の残照❇️
第19章 赤と青の欲望
コーテルが王宮内の敷地にある王弟宮に帰ると、そこには外出かや戻ったと見える母と妹の姿があった。
「あっ!お兄様、見て見て!新しいドレスを買ってもらいましたのよ!」
行きがけと今のドレスが違うことに気がついたが、まさか――――購入したのか?と、コーテルは母を見る。
「新作を店頭に並ぶ前に手に入れられて良かったわ――――…今日着ていったデザイン…可愛らしいネールには少し地味だったから…劇の始まる前に交換できて良かったわ――――コーテルも、素敵だと思わない?これぞ…時期王の妻って感じだわ」
時期王の妻と発言する母に鳥肌が立つ。
「お母様は…サンドラ様が時期王になると?」
「――――いいえ…時期王は…まぎれもなく…ロミでしょうね…」
さっきまで笑顔でドレスを喜ぶネールを見ていたレミだが、声のトーンが下がり…冷めた目で義理兄が時期王だと心にもない発言をする。
「でもね――――世の中分からないものよ?
ロミの実母キャロル様が…乳呑子と一緒に里帰り中に馬車の事故に会うなんて……誰も思わなかったくらい…そして、その後妻に…兄の婚約者であった私がなるくらい――――分からないものよ…」
その言葉にゾクゾクと悪寒が走ったコーテルは母であるレミの影が何故か濃くなった気がした。
「――――恐れ入ります。レミ様大臣様から明日の会食の件で…ご連絡が――――」
その知らせにレミの雰囲気はガラリと変わった。
