❇️片暉の残照❇️
第19章 赤と青の欲望
すると、騒ぎを聞きつけ何人か執事姿の宮使いが集まる。
インギルはその中に見知った顔を見つけ表情を和らげた。
「――――ハーパー!良かったわ、何とか言ってやって!この、門番が我々を中に入れないのよ!“公爵権限”はどうなっているの!」
インギルは蜜月を重ねた執事のハーパーをいつものように厳しくも甘い声色で命令するとフンっと、ふんぞり返る。
「――――は?“公爵権限”とは?…落爵したコレジバ“侯爵”家にはございません。“公爵”と“侯爵”発音は同じでも…位が違いますから…どうぞお引き取りください」
「――――何を言っているの?ハーパー?」
一瞬…何を言われたか分からないインギルは門の向こう側にいハーパーを目を見開いたはまま見つめる。
「インギル“侯爵”令嬢――――…貴方は…相変わらず愚かで…可愛いらしいですね」
ニヤリと笑うハーパーの姿に…インギルは何かに気がつく…。
「ハーパー…なぜ――――王宮使いの執事服など身に付けているの?その…我が家のコレジバ家の紋章は…とうしたの?」
「あ――――あぁ…コレジバ家の紋章は…朝こちらに戻る前にそちらの執事服と共に返しました。
数ヶ月…大臣からの命令でそちらにいただけなので――――本来はこの服がわたくしの仕事着でございます」
「大臣…の命令?」
「ええ――――…特別潜入監査でございます」