❇️片暉の残照❇️
第20章 母のバラ
火の粉は風にあおられ…屋敷に飛んできた――――…もちろん、周辺にある貴族の屋敷も巻き込まれた…
ハジロの屋敷も例外なく…庭や手の回らなかった裏庭の工具小屋が焼けた――――だが、大惨事になる前に火は消し止められたし、事前に皆で水を巻いていたことにより屋敷や敷地内の被害は避けられた。
私も、ずぶ濡れになりながら水を運ぶのを手伝った――――…
「テイス様、火元の特定と鎮火の知らせがありました――――…」
情報収集に駆り出されていたキロがずぶ濡れの私とニコルにタオルで包みながら、この状況の説明をしてくれた。
「――――火元は…王宮貴族御用達の…植物園です」
「え?――――植物園?」
私は“植物園”と聞いて――――母のバラを思い出す!
「お母さんの…バラ…」