❇️片暉の残照❇️
第20章 母のバラ
「お母様――――…」
「大丈夫…大丈夫よ!」
お母様は私を抱き締めると、使用人達に今一度屋敷の被害を確かめるように促した。
すでに空は夜の暗闇から抜け出し始め――――…遠くの…奥の空は薄い白いレースを引っ張り始めていた。
「テイス様――――大丈夫ですか?湯浴びの準備ができています…」
「――――あ…うん…お母様や皆は?」
広間や大門前で各々休みを取っている使用人たちは食堂から運ばれたスープや紅茶など口にしている…。
「我々は順番に休憩を取っております。奥様はもう少し…屋敷の状態を確認するそうなので、先にテイス様を休ませるようにと……」
「お母様…」
私は、一段落した様子に手にしていたトレイやタオルをキロに渡しうなずいた。