
❇️片暉の残照❇️
第20章 母のバラ
「では、足元に十分気を付けながらまいりましょう」
馬車を降りると――――…朝はとっくに開けたのに…暗くよどんだ景色に心がけザワついた。
「はい――――…」
私はキロとニコルの手を取りゆっくりと植物園を目指した。
いつも明るく整備された貴族街の道が、なんだか別世界の悪路を進んでいる気分になる。
「ここまで火の影響が来ているの?」
周りを見ると――――…半焼している貴族の屋敷が視界に入った。
高位貴族ほど王宮やその所有物でもある植物園に近い場所に屋敷を構える――――…。
半壊…半焼――――の屋敷がどんどん増えていく。
領土に本邸が有るとはいえ――――…王都で仕事や式典がある際は、別邸でもあるこちらの屋敷に入り込む貴族たちがほとんどで…年の大半王都にいる彼らにしたら死活問題である。
