❇️片暉の残照❇️
第22章 香油と裏切り者
不安を感じながらキロとニコルを連れて歩きながら屋敷に戻る途中、来たかった植物園にさしかかった。
火災があってから約1ヶ月…
周りの屋敷は修復も終わり、あんなに殺伐としていた通りも元通りになっている。
あの日の光景はいまだに目に焼き付き離れない――――…でも、その風景はもうここにはない…。
と――――…その植物園の正門があった場所に誰かがしゃがんでいる。
「誰…だろう…」
その人を良く見ると…その場所にお花をソッと置いた。
「……」
花を置いた人はその場にしゃがみこみ祈りを捧げ始めた。
その花は、ちゃんと生花店で購入来た立派な花だが…備えていた本人は旅行客のような大きな鞄を横に置きフード付きのマントを深々と被っていた。
私は気になりその人の近くに向かう…
「テイス様……」
キロが警戒するも、祈りを終えたその人の横顔は何処かで見た気がした。
「――――あ…貴女…///」
私は、その顔に見覚えがあった!