❇️片暉の残照❇️
第4章 お兄様と義理母
「あっ!ふわふわパンですか?あれは――――ミゲルバ料理長とコックの皆さんが改良に改良を重ねて出来た力作です!私は…いつものよりは少し柔らかくなる程度のレシピを紹介しただけですよ?
あれから、“酵母…菌”?と言うのを見つけたのは厨房の皆さんです!私はなにもしていません」
私は二種類のハーブがど~してパンを柔くするのは知らないし、他の食材で試したことは無かったから、あのあと厨房でどんな試行錯誤が繰り返されたかは……よくわかっていない。
「しかし、ミゲルバの手紙にはテイスに感謝している文面が多数かかれていたとか?フルーツハーブやハーブソルトも評判はいいぞ?」
お兄様が言うその品は、時々お邪魔して厨房でお茶をしていたときの雑談で生れたてものだった。
「山で取れる物を美味しく食べたいと思って作った物でしたが、私の作ったものよりハーブの種類も配合も完璧です」
私が使っていたのは山で取れた岩塩と自生していた数種類のハーブだけの雑なものだった。
「肉料理がとても美味しくなって、ふかふかパンもそうだが、最近はハーブソルトも王宮からの取り寄せもあったくらいだぞ、なあ?メルト」
お、王宮――――から?
「ええ――――…母が茶会でパンやハーブソルトを使った軽食を振る舞って以来、その噂が王宮の厨房にまで広間って……私の所に王宮料理長が訪ねて来たくらいです」
お兄様の所に――――…って、お兄様…って…王弟ご子息様の側近をしているとか――――何をしているのかは…分からないけど。