❇️片暉の残照❇️
第1章 王都からの訪問者
「冬は?雪の深い日々はどうされているのですか?」
「――――厳しいですね、ここら辺は雪が深いですから…。今年は早めに冬支度をしたいと思っていました。昨年は見通しが甘く…凍え死ぬかと思ったくらいです」
「なっ――――…なんと…」
ハジロ公爵はお茶をテーブルに置くと、私を見つめため息をついた。
「ティアナ様の事は本当に残念です――――…しかし、忘れ形見がいらっしゃるのなら…話は早い。
テイス殿――――我が家にてお世話させてはくれないだろうか?」
――――え?今…なんて?
私は、ハジロ公爵の言葉が理解できず固まる。
「もし、ティアナ様がいらっしゃるなら、我が家で身をお預かりし…お世話させていただきたいと…探しておりました。
いわれのない罪でご実家から離別させられ…平民となったティアナ様が不憫でならず、各法などを思案し手を尽くす覚悟でございました…」
「――――いわれのない…罪?」
「はい、我が家で誕生した新種のバラを盗んだと…言う――――罪でございます」
――――バラ?盗んだ?
「我が家で開発された新種のバラは王家に献上するバラで――――それはそれは美しく色も形も香りでさえも…他では真似できぬ唯一無二のバラでございます。
そのバラを盗み自宅で栽培していたと……噂が立ち――――…あっという間に裁きが行われ…ご実家から離別と共に平民と落とされ…さらに領土を追い出されてしまいったのです…」