テキストサイズ

溺れるまでしたい

第2章 好きな人


「ねぇ、亜美だれなの?」

「友達とか、その友達とか?」

「へー…」

「たまにはアユも弾かなきゃダメだよぉ。ねぇ、みんなー友達のアユ連れて来たよぉ」


勝手に連れてこられて、勝手に紹介される羽目になってしまった。


よろしくぅ。って、色んなところから飛んでくる声。

その声を耳にあたしは辺りを見回していると、


「…っ、」


思わず声を失って、背を向けて帰ろうとした瞬間、その腕は誰かに掴まれた。


「せっかく来たんだから帰んなよ。…アユちゃん」


クスクス笑った声。

聞き慣れた声。

振り返ったあたしに、傑は口角をあげた。


「ちょ、な、なんでいるの?」

「なんでって、友達に呼ばれたから」

「ご、ごめん。あたし帰るね」


足を進めようとするも、力強い力に進むことすら出来なくて。


「帰んなよ」

「ちょ、帰らせて」

「無理。これ、アイツらに見せよっかなぁ〜」


笑いながら取り出した携帯。

そこにはあたしが傑のおちんちんを咥えていた写真。


「え、ちょ、消してよ」

「だーめ。彼氏いるのに俺としました。って、亜美に言おっかな」

「え、だ、ダメだって。そもそも亜美の事、知らないでしょ?」

「知ってる。アイツと俺は幼馴染だから」

「え!嘘でしょ?」

「嘘ついてどーすんだよ」


そう言って傑はニヤリと口角をあげた。


「ねー、アユどーしたの?」


不思議そうに近づいてきた亜美は私を傑を見つめた。


「あ、あの、亜美と幼馴染って言うから」


あたふたするあたしに傑はクスクス笑う。


「あ、うん。そうだよ。モテるからって調子にのってんだよ、この人」


はぁ。と、ため息をつく亜美。

ほんとだったんだ。と、思った瞬間、尚更あんなことをしたなんて言えるはずがなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ