溺れるまでしたい
第1章 浮気心
どうしよう。
どうしよう。
男と目が合ってしまった。
しかもあの男は学年いちの喧嘩っ早い男で有名だ。
いや、どちらかと言うとチャラい男。
そして校内いちのモテ男だったりする。
カッコいいって、女子が騒いでいる。
確かに顔は物凄く端正。
その男が、なんで梨花先生と?
あー…、わかんない、わかんない、
髪をムシャクシャかき乱し、早足で食堂に向かう。
「もう、アユ遅い。もう時間ないから先に食べたよ!」
「うん、ごめん」
ご立腹の亜紀。
一番の親友なのに、あたしと翔先生が付き合ってる事は言えてない。
だって、さすがに言えない。
いくら親友でも先生と付き合ってるなんて言ったら…
「何してたの?」
「え、あっ、う、うん…」
「ってか、なに?」
「なんでもない」
「アユさ、朝からおかしいよね」
「え、そう?」
「おかしい。おかしすぎる」
「そんな事、ないない」
平然の顔を装って、あたしは亜紀に笑顔を振りまいたけど、実際心の中はそうではなかった。
その放課後、神様は悪戯だと思った。