僕らのStoryline
第9章 見つめる
「だって、何?」
「何でもない」
俺が視線を逸らす。
カメラをめめの手から奪い取りテーブルに置いた。
「さぁさぁ、準備しよ、みんな遅ない?」
話を変えようとしたら背中に温もりを感じて。
「俺のことよく見てるね」
耳元にかかる熱い息。
「ちょっ!やめっ!」
「こうじ」
「なんよ」
もう、降参だ。
そうや、いつも見てる。
いつも、めめを。
俺の前に回るめめの腕に力がこもる。
「こうじ」
俺はその腕を解き振り返りめめを見つめる。
「見てる。いつも見てるよ」
でも、本当に見てるだけ。
めめと視線が交わることはない。
「見るくらいええやん」
だからこうやってお茶らけて誤魔化す。
「カッコいいめめを残しておきたいわけよ!ファンのみんなも喜ぶで!!」
めめが何を言いたいのかわからないけど、気まずいからトイレにでも行こうと立ち上がる。
「じゃぁ、今日はたくさん撮らしてなってことで俺はお手洗いへ」
「待って」
右腕を掴まれ、グンっと後ろに引っ張られた。
「うわっ」
そのまま背中をめめの胸に預けるようになりめめの腕が俺のお腹にまわる。
「ちょ、危ないやん」
「見てよ」
「なにが?」
「カメラ構えないで俺を見てよ」
「へっ?」
背の高いめめだから、上から言葉がふってくる。
少し怒ってるような、悲しそうな口調で。
「めめ?」
目線をあげめめと視線が交わる。
めめは俺の体の向きをかえて両肩に手を置いた。
真っ直ぐ俺を見るめめ。
真っ直ぐめめを見る俺。
俺は目をゆっくりと閉じた。
だって、めめの顔がゆっくり近づいてきて少し顔を傾けたから。