箱……戎壹
第2章 十月十日後の母の手
遠くに聞こえる声を便りに…ゆっくりと振り向くと――――。
あの日の…別れた主人と義母が…新生児室に入るのが見えた。
…十月十日?
それよりも早いが――――…
まさか…本当に…
あの人の…若い嫁は――――…身ごもって…出産したのか!?
私はフラフラと…新生児室に向かった。
するとそこには――――…
産まれたばかりの子供を抱く…義母をと主人の姿があった――――。
「本当に――――なんて良い嫁だ…、一回に二人も!二人も授かった!あの子を嫁にして正解だったなぁ~」
「そうだね、母さん…。母さんの言う通りにして…良かったよ」
――――…なんて…事…。
なんて事…。
なんて――――…屈辱。
なんて――――…運命。
私は――――次の日――――
無事に退院をした。
長い闘病生活を終え――――大きな荷物と共に…病院を後にした。