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狂想記

第2章 気持ち悪い生き物

 私は沼の中にいながら、それを厭だと思いながら、なぜか沼を出ることができない。別に誰かに押さえつけられているわけでもないのに、職務というわけでもないのに、私は沼から出ることができない。
 なぜなのかよく分からないけれども、分からないなりに考えてみると、どうやら私自信が、沼から出ることを拒んでいるようだと気づいた。
 気づいたというのに、私はそれでも沼から出ようとしない。
 出た方が良いに決まっているのに、なぜか出ることができない。いや、出たくない。
 沼から出ると、何か嫌なことがあるのかもしれない。沼の中はものすごく気持ち悪いけれども、その気持ち悪さを超越するさらに嫌なことが、沼の外にはあるのかもしれない。
 だったら、勝手のわかっている分、沼の中にいた方がいいのかもしれない。
 私は、沼の中にいることを決断した。
 そして私は、いつの間にか、沼の中を泳ぐ、気持ち悪い生き物の一匹に変身してしまった。

(おわり)

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