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和子の話。

第1章 セールス。


体型は、和子よりも大柄だ。
“個人情報”の交換を済ませると、和子と百合子の話が弾み始めた。

和子も、“先輩”と話をしているような、打ち解けた気持ちになった。
この喫茶店での“雑談”から、翌々日に百合子が契約をしてくれた。

契約後も、百合子の知人や縁者の紹介もあり、契約成績が増えていった。
和子は、百合子との“付き合い”を、最優先にしていた。

そして、最初に出会ってから3ヶ月目に、旅行に誘われたのだ。
「もし和子さんさえよかったら、ゆっくり温泉にでも行かない?」

もちろん和子は、快諾した。
百合子を、仕事を超えて慕っていたからだ。

「でも、旅行のことは内緒にしてくれる・・」
百合子が、声を潜めそう付け加える。

「はい・・」
「ほら・・和子さんのことを、いろいろ言う人いるのよ・・」

和子と百合子の“付き合い”を、金銭関係と邪推されていた。
“紹介料を渡している”と、噂になっていたのだ。

誘われた日から2週間後。
和子は、前日に借りたレンタカーで、隣町の駅へ向かった。

その駅前で、百合子と待ち合わせをしていたのだ。
目的地の温泉は、車で2時間ぐらいの距離だった。


病の川沿いに、数軒の旅館が建っている。
その中に《立花》という、日本旅館があった。

百合子が、十数年来贔屓にしている老舗だそうだ。
二人は、離れに通された。

離れは、川に面して、建てられている。
専用の露天風呂も備えている。

旅館の女将が自ら案内してくれた。
女将がお茶を煎れながら、時候の挨拶、来訪のお礼と、終始にこやかだった。

和室の二間続きに、窓際には二人掛けのソファが置いてある。
そのソファに座り、和子は百合子とお茶を飲んだ。

差し向かいで百合子の顔を見ていると和子は顔が赤らんでくる。
百合子がお風呂へ誘ってきた。

離れの露天風呂ではなく、本館の大浴場だ。
二人は浴衣に着替えると、連れ立って浴場へ向かった。

大浴場は、川面に大きなガラス窓を配しているので、露天風呂はない。
平日のせいか、他にお客はいなかった。

脱衣所で浴衣を脱ぐ。
壁に備え付けの棚に着替えの下着を浴衣でくるみ入れる。

隣で、百合子が浴衣を脱いでいる。
白い彫像のような裸身が眩しい。

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