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身体を重ねても、想いはズレたまま

第8章 第8章 想いはズレる




そんなある日の夜、レナから電話がかかってきた。



夜中の12時だ。


どうやらキャバクラで仕事をしているらしい。



「今どこにいるの?」

「家にいるよ」

「私は六本木だよー」

「わかってるよ。仕事中だろ」

「なんでわかった?」

「そんなの、電話の向こうで、黒服が接客してる声が聞こえるから、わかるよ」

「なんだー。
そっか。
つまんない。あはは」


彼女はテンションがいつもより高かった。



お酒が入るには、まだ宵の口だ。



ヘベレケになるには早すぎる。



「仕事、もどんなくていいの?」

「んー。まあね。
何してたの?」

「何って。いま?
もう寝ようかと思ってる」

「なんで?」

「今日、仕事で疲れて。
ぐったりだから」

「ふーん。
落ちてきた」

「え?何。
何が落ちてきたって?」

「もう、いい」

ガチャ。ツーツー。



いきなり切れたのである。



リダイヤルしても留守電にして出ない。



落ちてきたとは何だ?
何が落ちたのか?



数時間経って電話を入れても留守電のままだ。



私が何かの導線を踏んだのか?



とりあえず、その日はそこで寝落ちしてしまった。


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