不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第40章 汽車
「…お前が望むなら、俺今からでも迎えに行くけど?」
瀬川くんは本気か冗談か分からないトーンで言った。
だめだと分かっていても、もう止まれない。
行く先が大きな落とし穴でも私たちはまた逢瀬を重ねるだろう。
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土曜日。
私はもう寝室にフミが寝ているかどうかを確認することはない。
夫が家にいるかどうかも分からないまま、シャワーを浴びて支度をする。
未来など案じても無意味だ。
私は瀬川くんに逢いに行く。
ただ彼と時間を、笑顔を共有したい。
玄関の姿見で身なりを整えると、家を出た。
テーブルに残してきた離婚届と短い置き手紙に、フミはいつ気付くだろう。
私は今日もあなたへと向かう汽車に乗る。
もう振り返らない。
この情熱が、永遠に続くと信じて。