不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―
第8章 隠し事
体を支えられて姿勢を立て直すと、私は彼の胸にうずくまる。
瀬川くんはそのまま私をきゅっと抱きしめて、小さな声でささやいた。
「…ごめん」
「謝らないでっ…
なかった事に、 したくない……」
すると瀬川くんは私の髪を撫でながら言う。
「そうじゃなくて…抑えきれなくてごめんって事」
私はくらくらする頭も、震える下半身も、全部を瀬川くんに預けた。
しばらく無言で抱きしめ合った後、腕を解くと
「また会える?」
と瀬川くんが聞く。
「うん…」
もう一度キスがしたくて、瀬川くんを見つめる。
「ねぇ……そういう顔しないで。」
「えっ…。そういう顔って?」
「…理性がどっか飛んでいきそうだから」
そう言ってまた、そっと触れるような軽いキスをする。
瀬川くんの唇の感触がずっと消えないまま、予約してあるホテルまで送ってもらい別れた。
今夜起こった事が夢になるのが怖くて、私はなかなか寝付けなかった。
それと同時に、結婚してから他の男の人となにかあったことがない私は、初めてのこんな情事に戸惑ってもいた。